工場で大きなロボットアームが部品をつかんだり、溶接したりしている映像を見たことがある方も多いのではないでしょうか?
その多くが、人の腕のように自由自在に動く「垂直多関節ロボット」と呼ばれるタイプの産業用ロボットです。別名「6軸ロボット」とも呼ばれるこのアーム型のロボットは、今や世界中の製造現場で最も広く使われており、ものづくりを支える欠かせない存在です。
では、なぜこれほど多くの現場で選ばれているのか、その構造と魅力をご紹介します。
人の腕をヒントにした、しなやかな構造
垂直多関節ロボットは、人間の腕の動きを参考に設計されています。
人の腕にある「肩」「ひじ」「手首」のように、ロボットにも複数の関節(ジョイント)があり、それぞれが回転して動きます。
これらの動きを組み合わせることで、人の腕に近い滑らかな動きが可能です。
「垂直」という名前は、ロボットの回転軸が床に対して垂直に立っている構造に由来しています。この回転軸の配置によって、ロボットは前後に体を傾けたり、手首を大きく回したりといった広い動作範囲を実現できます。限られたスペースでも効率よく複雑な作業を行えるのは、この構造ならではの特徴です。
こうした仕組みによって、垂直多関節ロボットは高い柔軟性を発揮できます。
現場のあらゆる作業で活躍!多様な用途と柔軟性
垂直多関節ロボットの最大の特徴は、その”柔軟さ”にあります。
直線的にしか動けないロボットとは異なり、複数の関節を組み合わせることで、障害物を避けながら滑らかな軌道を描けます。人の手では難しい角度から工具を当てたりといった動作も得意です。
さらに、ロボットの先端には「ハンド」や「ツール」と呼ばれるパーツを付け替えることができ、作業内容に応じて「つかむ」「ねじを締める」「溶接する」「検査する」など、多彩な動きをこなせます。
自動車工場での溶接や塗装、電子機器の小さな部品取り付け、さらには食品や医薬品の包装・仕分けまで、さまざまな現場で活躍しています。

加えて、一度プログラムを設定すれば、何度でも同じ動きを繰り返せるため、品質を一定に保ちつつ高い生産効率を実現します。
ツールを付け替えるだけで、一台で幅広い作業をこなせる柔軟性と、スピード・精度・安定性を兼ね備えた性能こそ、垂直多関節ロボットの大きな魅力であり、製造現場に欠かせない頼れる存在です。
進化し続ける垂直多関節ロボット
近年では、センサーや安全機能の進化により、人と同じ空間で働ける“協働ロボット”も登場しています。
協働ロボットは垂直多関節ロボットの構造をベースにしており、人との距離を測定したり、衝突を検知して自動的に停止したりする機能が加わることで、安全性を高めています。
さらに、垂直多関節ロボットはこれまで製造現場の自動化を支えてきた技術を基盤に、AIや画像認識、IoTなどの技術との組み合わせによって、高精度かつ柔軟な動作が可能です。
人と協力して作業を行う場面も増え、工場だけでなく物流や医療、食品、サービスなど、さまざまな分野で活躍の幅を広げています。 今後は農業や建設、介護などの新たな分野でも導入が進むと見込まれており、技術の進化とともに、社会のさまざまな場面で私たちの生活を支える存在として、さらに広がっていくことが期待されています。