水平多関節ロボットとは?

― 組立工程で活躍する高速・高精度な水平多関節ロボットの特徴と役割

現代の製造現場では、ロボットがさまざまな作業を担いながら、品質と効率を両立させる存在として活躍の場を広げています。
工場で使用されるロボットには、溶接や塗装を行うもの、重いものを運ぶものなど、用途や工程に応じて多岐にわたる種類が存在し、それぞれが最適な役割を担っています。

一般的にテレビや工場などでよく目にするのは人の腕のように自在に動く垂直多関節ロボットですが、今回ご紹介するのは、より「速さ」と「正確さ」が求められる組立工程や部品の位置決め作業で活躍する水平多関節ロボットです。
水平多関節ロボットは、組立や部品搬送などの工程で多くの製造現場に導入されており、効率的なものづくりを支える存在として広く活用されています。

本記事では、水平多関節ロボットの構造や特長、活用されている現場、導入による効果についてご紹介します。

水平多関節ロボットの構造と特長

水平多関節ロボットは関節軸が水平方向に配置されたロボットで、上から見ると人の腕のような形状をしており、アーム長に応じた平面作業範囲内で高速かつ効率的に動作します。

こうした構造から、別名「SCARA(スカラ)ロボット」とも呼ばれています。
SCARAとは「Selective Compliance Assembly Robot Arm」の頭文字をとったもので、水平面には柔軟性を持ちつつ、上下方向には高い剛性を持つ構造が特長のロボットを指します。

また、ロボットの主な回転軸が床に対して水平に配置されているため、平面(X-Y軸)での高速動作に特化し、高精度で繰り返し作業を行うことができます。構造がシンプルなぶん剛性が高く、長時間稼働しても動作が安定しやすい点も大きな特長で、電子部品や精密機器の部品の位置決めや高速かつ高精度な組立作業に最適とされる最大の理由です。

一方で、上下方向(Z軸)の動作範囲は垂直多関節ロボットほど広くないため、高さを変える作業や複雑な三次元動作はあまり得意ではありません。

さまざまな現場での活躍

水平多関節ロボットは、主に次のような工程で活用されています。

  • 電子部品の組立
  • 製品の整列・供給
  • 検査装置への部品投入
  • 軽量ワークの高速搬送 など

これらの作業に共通しているのは「同じ動作を速く、正確に繰り返す必要がある」点です。
水平多関節ロボットは動作範囲が限定されているため、無駄のない動きで高速処理ができ、品質のばらつきも抑えられます。

垂直多関節ロボットとの違い

垂直多関節ロボットは、人の腕の関節(肩・肘・手首など)に似た構造を持ち、多方向に柔軟な動作が可能です。
そのため、複雑な三次元の曲線軌跡を描く作業や、高い位置または狭い空間での作業、そして大重量のワークのハンドリング、溶接、塗装など、幅広い工程で利用されています。

一方、水平多関節ロボットは、平面(X-Y軸)での高速動作と高精度な繰り返し作業に特化した構造を持ちます。
垂直多関節ロボットのような自由度の高さはありませんが、その分、部品の位置決めや挿入といった微細な組立工程など、スピードと安定性が求められる現場に適しています。

用途や工程に合わせて適切なロボットを選ぶことで、生産性をさらに高めることができます。

導入するメリット

水平多関節ロボットを導入することで、製造現場には次のような効果が期待できます。

作業効率の向上とタクト短縮
平面内での繰り返し動作に強いため、組立・整列・搬送などの工程でタクトタイムを大きく短縮できます。高速性に特化した構造により、軽量ワークでは特に優れた処理能力を発揮します。

② 品質の安定化(不良品の低減)
同じ動作を高精度で繰り返すため、作業者の疲労や個人差によるばらつきが発生しません。
寸法精度や挿入精度が求められる製造工程では、品質の安定化につながる大きなメリットがあります。

③ 作業者の負担軽減と人員配置の最適化
単純で負荷の高い繰り返し作業をロボットが担うことで、作業者がより高度な作業や工程管理など、付加価値の高い業務に集中できます。結果として、人員の再配置や働き方の改善などにもつながります。

④ 省スペースでのレイアウトが可能
水平多関節ロボットは占有スペースが小さく、セル生産方式や小型ラインにも導入しやすい構造です。既存ラインの一部を置き換える形でも追加しやすく、レイアウト変更の自由度が高い点も大きな魅力です。

⑤ 教示や保守が比較的容易
動作軸が少なく構造がシンプルなため、教示にかかる時間が短く、保守作業の負担も軽減できます。特に、多品種少量で段取り替えが多い現場では、運用面でのメリットが大きくなります。

現場を支える水平多関節ロボット

高速性と精度を兼ね備える水平多関節ロボット(SCARAロボット)は、組立工程を中心に多くの製造現場で導入が進んでいます。限られたスペースでも効率よく作業できる設計や高い繰り返し精度を活かし、今後もさまざまなものづくりを支えていく存在となるでしょう。

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